棚部 裕貴
東京郊外の300uほどの土地に賃貸用の戸建住宅3棟を設計するという依頼を受けた。地権者が当面の間賃料収入を得ながら、将来的に土地建物を第三者へ分割譲渡を行うことを見据えた計画である。マネジメントを行う不動産会社による市場分析の結果、ファミリー世帯をターゲットとして「間取り」を「4LDK」とすることが決定され、これに従い80uほどの床をリビングと4つの個室に割り振る簡素な平面とした。
敷地は東側に接道した南北方向に長い土地である。これを分割して東西方向に長い3つの敷地とした。東側道路に沿って駐車場、西側にできる限り大きな庭を確保し、残りの敷地中央部に南北目一杯に建物を配置した。道路はこの地域の抜け道で自転車、歩行者の通行が多い。往来を建物で遮ることにより箱庭のような静かな庭を作り、窓を設けて開いた。道路側には窓を設けずに閉じた。水切から笠木まで板金の見え掛かり寸法を統一し、壁面を道路境界線と僅かに角度をつけて配置することにより無窓の外壁の表情を整えた。
本設計は平面計画の制約がある中で主題を配置計画と外観設計に求め、豊かな空間の創造に務めたものである。